海外ブローカーを調べていると取得している金融ライセンスについて不安に感じる方が多いと思います。なぜ、聞いた事もないような金融ライセンスを取得しているのか?そこで海外ブローカーが取得している金融ライセンスについて簡単にまとめてみました。
海外の金融ライセンス
欧州証券市場監督局(ESMA)による規制の強化
多くの日本人が海外FXを選ぶ理由の一つが『ハイレバレッジ』だと思いますが、2018年8月1日に『欧州証券市場監督局(ESMA)』が以下6つの規制強化を行った事により海外FXの特徴である『ハイレバレッジ』を提供出来なくなった海外FXブローカーが多数発生しました。
- EU圏においてバイナリーオプションの全面禁止
- メジャー通貨ペアは『最大30倍』マイナー通貨ペア『最大20倍』までのレバレッジ規制
- 強制ロスカットを50%に統一
- ゼロカットの義務化
- インセンティブトレードの禁止(ボーナス・キャッシュバックを含む)
- 顧客の損失を報告書にて提出
この規制は欧州経済地域(EEA)規制下のブローカー全てに適用され、EEA内に居住している顧客に限定されません。この規制により、ほとんどの海外FXブローカーが日本のブローカーと変わらないサービスを提供しなくてはならなくなりました。ここで重要なのが『EEA内に居住している顧客に限定されない』という点です。要するに日本の居住者にも適用されるという事です。
欧州経済地域(EEA)とは
EU加盟と、スイス以外のEFTA加盟国(ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン) です。
【EEA】
ベルギー・ブルガリア・チェコ共和国・デンマーク・ドイツ・エストニア・アイルランド・ギリシャ・スペイン・フランス・クロアチア・イタリア・キプロス・ラトビア・リトアニア・ハンガリー・マルタ・オランダ・オーストリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロベニア・スロバキア・フィンランド・スウェーデン・イギリス・アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー
ESMA規制対象国と金融ライセンス一覧
ESMA規制による海外ブローカーの対応
規制対象の海外FXブローカーの対応は大体2種類にわかれました。
- EEA以外の市場からの撤退
- EEA以外のオフショア国で別法人を設立し金融ライセンスを取得して継続
日本人に人気のある『XM』はいち早く規制への対応をしたブローカーの一つです。元々は『 キプロス証券取引委員会(CySEC)』 で日本人顧客を対応していましたが、現在はセーシェルに『Tradexfin Limited』という法人を設立しセーシェル金融庁のライセンスを取得し規制前と同様のサービスにて取引を行えるようにしています。
オフショアとは、本土から離れた地域(海外)の事をいいます。
金融用語で使用する場合は、非居住者(外国人)に対して、租税環境を優遇している国または地域の事を指します。オフショア地域は『タックスヘイブン』とも言われ金融ライセンスの取得が比較的緩く早く取得できます。
ライセンス変更による補償について注意
これまで『 英国金融行為監督機構(FCA)』や『 キプロス証券取引委員会(CySEC)』を取得しているブローカーの口座で取引していた時に万が一破たんした場合に、『 英国金融サービス補償機構(FSCS) 』や『投資家補償基金(ICF)』が補償金を支払ってくれていました。しかし、新たに取得した金融ライセンスにこの補償は適用されません。
FCAやCySECを取得しているブローカーだから補償が適用されると勘違いしがちですが、補償されません!適用されるのはあくまでFCAやCySECの下で登録されているブローカーと取引している場合です。別法人を設立して別のライセンスを取得している以上、別ブローカーだと思う事が妥当です。最悪の場合、別法人は金融ライセンスを取得していない場合もありえます。
『XM』を例として説明してみます。規制前の『XM』は日本人顧客の対応を『Trading Point of Financial Instruments Ltd』というCySECのライセンスを取得している会社で行っていましたが、規制後は『Tradexfin Limited』というセーシェル金融庁のライセンス取得した会社で『XMTrading』というサービス名で日本人在住者への対応を行っています。
世界的にも大手であるブローカーは、『XM』同様に顧客の居住区によってライセンスを変えている事があるので、自分の居住区で適用されるライセンスを知る事がトラブルを事前に防ぐ予防となります。稀に海外FXブローカーの中には、任意で信託保全や保険を導入しているブローカーもありますので、そのようなブローカーを検討するといいと思います。
海外金融ライセンス(Regulation) | 国 | 補償機関 | 補償金額 | 口座開設 | 主な ブローカー |
日本金融庁 (JFSA) | 日本 | 日本投資者保護基金 | 最大1000万円 ※証券会社が返還出来なかった場合 | 日本居住者 のみ | SBIFX DMMFX … |
英国金融行為監督機構 (FCA) | イギリス | 英国金融サービス補償機構 (FSCS) | 最大8万5千ポンド ※2019/4/1以降5万ポンドから変更 | ブローカーによってはEEA居住者のみ | LAND-FX FXPRO … |
オーストラリア証券投資委員会 (ASIC) | オーストラリア | 損害賠償制度(CDDA) | 不明 | 日本居住者 不可 | Pepperstone |
キプロス証券取引委員会 (CySEC) | キプロス共和国 | 投資家補償基金(ICF) | 最大2万ユーロ | ブローカーによってはEEA居住者のみ | XM … |
セーシェル金融庁 (FSA|Seychelles) | セーシェル共和国 | なし | なし | 日本在住者 可 | XMTrading HotForex |
ベリーズ国際金融サービス委員会 (IFSC) | ベリーズ | なし | なし | 日本在住者 可 | Axiory |
バヌアツ金融サービス委員会 (VFSC) | バヌアツ共和国 | なし | なし | 日本在住者 可 | TitanFX |
ニュージーランド証券投資委員会 (FSP) | ニュージーランド | なし | なし | 日本在住者 可 | GEMFORX |
まとめ
ハイレバレッジと金融ライセンスの関係
日本だけでなく欧州でもレバレッジ規制を強めた為、ハイレバレッジで取引するには日本や欧州の管轄外であるオフショア地域でライセンスを取得している海外ブローカーの口座を使用する必要があります。大手ブローカーの全てが安心とは言えませんが、EEA非居住者の顧客を大切にしてくれるブローカーもあります。オフショア地域での金融ライセンスには信託保全を義務化しておりません。しかし、海外FXブローカーの中には任意で信託保全を導入していたり、日本人顧客を大切にしてくれているブローカーも少数ながらありますのでしっかり見極めてブローカーを選ぶとよいでしょう。

大手だから安心とか、聞いた事のない金融ライセンスだから危険とか言い切れないですね…
ハイレバレッジを優先するなら、金融ライセンスはブローカーを決める為の一要素として考えて、任意で信託保全や保険を導入しているブローカーを選ぶと良さそうです。
番外編
日本の金融ライセンスと補償
日本国内の証券会社は金融庁の許可を得ています。その際、信託保全が義務付けされていますので、投資家の資産は返還されます。しかし、万が一、何かしらの事情で分別管理違反により資産の返還がされなかった場合は、日本投資者保護基金によって最大1000万円が補償されます。ただし、全ての証券会社が対象ではなく、日本投資者保護基金の会員証券会社なのかが条件となります。
※日本投資者保護基金会員一覧

日本の保証は世界的にもかなり高いですね!